第8回『一人暮らしの頭の構造』(2001_06_11)
 「ああー、もう、頭だけパカッと取り外して洗えんかなあ」 好きでやってる仕事だからそれにケチつけるわけじゃないけど、毎晩家に帰るのが遅くなると、そう思う。
 何もかもが面倒になり、鞄は翌朝まで玄関に置きっぱなし、取ってきた新聞は3、4日くらい同じとこに積み上げっぱなしなんてこともよくある。脱いだものを洗濯機に放り込むのが限界。
 それでも、どうしても省けない面倒な儀式がある。メイク落としと普通の石鹸でダブル洗顔、化粧水に美容液、歯磨きして、コンタクト洗浄して…。

 だから、こうする。家に帰ったら玄関で頭をはずして、機械に入れてスイッチを押す。(そっからどうやってベッドまで歩いて行くのかはこの際おいとく。勝手知ったる間取りなら、手探りでも行けるっしょ)
 そうすると、メイクを落としてくれて、歯を磨いてくれて、コンタクトもはずして洗って、朝にはまたはめてくれるの。洗濯機型だとガコンガコンして痛そう&傷みそうだから、電子レンジ型が良い。ついでにシャンプー&ブロー、頭皮マッサージとかしてくれたらヨダレが出る。
 重い頭を下ろしてフワフワと眠り、朝にはスッキリコンと目覚め、カチャッと頭をはめて御出勤できたらいいな。ああ、メイクもしといてくれるといいねえ、いいねえ。「仕事モード」「夜遊びモード」とかボタンで選べたりして。

 そりゃあねえ、真剣にこんなこと考えてるようなヒトは縁遠くなるってば。家に帰ってきて真っ先に頭はずすような女と誰が暮らしたいかね。
 私は、横から頭はたかれるかもしれないけど、多分デートするには楽しいと思う。他の男に自慢してもらえるようなルックスじゃないのが残念だけど、サービス精神だってそれなりにあるしさ、とりあえず一夜のエンターテイメントとしては悪くないはず。
 でも、結婚して一緒に住むなんてのは駄目々々。申し出てくれるキトクな人もいたにはいたけど、真似事ならやってみたことあるけど、今はもう人様にさらせない「私という生き物」の生活が出来上がっちゃってるもんね。そこに他人を入れたら、その人は悲しむ。「コイツは家に帰ってきても一度も俺の顔を見ない」と。

 でも、でも、別に同じ屋根の下にいなくても、一緒に生きてはいけるよね。結婚じゃなくたって、物理的に生活をシェアしなくたって、できなくないよね。ね。だって、心だけだったらきっと一緒にいられる。でも、それって「邪道」とか「本物じゃない」って括られるんだろうな。だけど、私はもう他人との「生活」の共有に耐えられないの。だから、それが最後に残された望みなの。