あるワンマン社長の英語

私が大学を卒業して初めて勤めた、ある貿易会社社長の話す英語は、自信満々でワンマンな経営ぶりをそっくり反映していました。当時一緒に働いていたイギリスからの帰国子女は、彼の英語についてこう言いました。
「社長の英語って、『俺、コレ欲しい。送れ、早く早く』みたいなレベルなんだけど、それが逆にいいんだよね」
そういう英語でも、彼の態度は堂々立派でしたから、それがかえって「この人の言うことはちゃんと聞かなきゃ」と相手に思わせる結果となっていたのです。実際に、彼が直接かかわる仕入れでは、細かな仕様や納期に関する先方の間違いがまったくありませんでした。その点で、流暢に英語を操るイギリス育ちの彼女も、アメリカで3年弱勉強した私も、全然かなわなかったのです。

美しくなくてもいい

彼の英語は、色気も素っ気もなくて単刀直入。でも、彼の刀は、美しくなくても、とてもよく切れました。人生のたいていの場面において、強さは美しさに勝ります。
時と場合によっては、やはりちゃんとした英語を話したいとき、話さなくてはならないときはあるし、美しくてしかも強いのが一番いいのは当然のこと。でも、言いたいことを分かってもらう、気持ちを伝えるという目的が達成されるなら、ネイティブと同じ語彙、同じスピードを持てなくても、So what?です。

場数を踏んで、ポイントを掴む

完璧な英語なんて不要ですが、「ここを間違えると通じない」「こう言うと別の意味になってしまう」というポイントがありますから、そこだけはおさえましょう。それには、場数を踏むのが近道。アメリカに留学してからの私は、今に至るまで、来る日も来る日も試行錯誤の繰り返し。でも、そうやってこそ一つ一つステップを上がっていくのです。最初はいびつな英語でも、あっちこっち転がし続けるうちに角がとれ、磨かれていきます。
正確じゃなくても美しくなくても、気後れしないように。昔あの社長にかなわなかった私も、今ではネイティブにYour English is very strong.と言われるようになりました。ずぶとさの勝利です。

「強い英語」に通じる道は?、こちら。